

73 冬のバレリーナ
写真下のたくさんのチューリップの中央にある一本のチューリップは"バレリーナ咲き"というそうです。上の写真はその"バレリーナ"のポートレイト、ちょっとボケていますが
。

何年前になるのか、、、クリスマスでした。東京の友だちが「富山のチューリップ農家から、チューリップの花束を送ってもらいます
クリスマスが過ぎてからになるけど」とあって、数日してチューリップが届きました。伝票には「15本」と書いてありました。それは農家のメモ書きだったでしょう。

箱を開けると愛らしい色とりどりのチューリップが顔をのぞかせ、口々に可愛い笑い声がしているようでした。「チューリップは長旅をしてきましたので、水に浸けてください」という(印刷の)メモが入っていました。
水に浸けながら、「あれ?
」と思ったのが、花の感じが違うチューリップが1本あったからです。数えてみると15本は普通のチューリップで、16本目のチューリップが"バレリーナ"でした
。


その時に、まだ、流しで不思議がりながら水を止めようとした時に玄関にお客様が来られました。白いトレンチコートで、都会の雰囲気でした。コーヒーということで、流しの洗い桶(※写真の左端にステンレスがちょっと写っています
)にチューリップがいっぱいあるところで、コーヒーの準備をしました。

お客様は東京の大きな出版社からで、春に創刊する新しい月刊誌の準備室の名刺を下さいました。すると、その出版社のことや、他にも、私が(こんな片田舎に住みながら)いろいろな人(※出版社が特集で扱うクラスの)を知っていたり懇意にしてもらっていたことなどから、話が繋がりつづけました。
私はその人が来られた時の、チューリップのことを話し、彼が「店の中を見ていいですか?」といわれた時にはチューリップを見せ、また繋がり続ける話をしながら、チューリップをいくつかの花いれに挿しました。ポートレイトはその時のものです。
たくさんお話をして、やがて「今日は下見ですから、また来ます
」と言って帰っていかれました。それから、チューリップを送ってくれた友だちに、不思議な出会いの話をしました。16本目のチューリップについては「それは、きっと、チューリップ農家からのプレゼントよ
」と笑っていました。


確かに、チューリップ農家が、どのオーダーにもしているサービスだったかも知れません。いや、多分そうだと思います
。が、もしかしたら、その時の"天使"がちょっとプレゼントしてくれたのではないかしら。このあと、本当に、不思議なことが次々と起こりました。チューリップの届いた日の、白いトレンチコートの旅人に会った、その10年も20年も前のたくさんの事が、この後、色がつき音楽が流れて、長編小説か長編映画のように展開をしていきました。

ささやかなブログではとても書けない壮大なドラマです。それを、"私"ではなく"誰か"の物語に書き上げることも、足ちゃんの骨折をきっかけに、この後の人生でしようと思っています。