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ひよこ色のエックス(X) 93

93   北極星のようなエックス
 
入院の、どうやら折り返し点を過ぎて、まだ3週間ほど先ではあるのだけど、"退院"や"退院後"の予定の話がでるようになりました。しかたがないんだけど、それって、ちょっとザワッ・・とするのですね。それが人生ですから。そんな時、いつも【ゴールデンスタンダード(最小限必須項目)】という言葉を思い出します。
 
29年前に、福島区にあった阪大病院で腎臓の手術を受けて、病院はその半年後に吹田に移転して、その4年後くらいには先天性股関節脱臼が悪くなっていて、手術を前提に阪大病院の整形外科にかかっていました。「手術は今すぐでもいい」と(結婚みたいに)言われたのですが、いろいろなレントゲンに写らない問題で家をひと月も開けられなかったので2年ほど伸ばすことにしました。
 
そして、「今すぐでもいい」といわれてから2年後、今から23年ほど前、半年に一回くらいの定期検診の時、時間があったのとふと行ってみたくなり、泌尿器科の外来に上がってみました。
 
しばらくぼんやりしていると、廊下の向こうから、ドクターが来られるのがわかりました。右に1人左に2人、インターンの先生らしきひとを従えて、長い白衣を翻して、"白い巨塔"みたいでしたよ。廊下にいた人はみんな廊下の端に行きました。もちろん、わたしもそうしたのだけど、ドクター(※)が私を見つけて、
 
「忙し過ぎるンだよ」そのとき4メーターくらい離れていたかも。それから近づいた時に、止まるくらいにゆっくりになって
「ゴールデンスタンダードだよ」お供の先生も一歩後をついて、同じようにゆっくりになられました。
 
すれ違う時でした「何語ですか?」って訊きました。まあ、間抜けですが、何しろ咄嗟のことだったので、お医者様の専門語かと思ったのです。
 
もうすれ違っていましたが、ドクターだけが後戻りして、他の白衣はそこに止まって立っていて、ドクターは
 
「英語だよ
「必要最小限必須項目、学生たちにはそう教えているよ」
「いいね」そしてお供を従えてどこかのお部屋にはいられました
 
端によけていた人たちがまた廊下の中ほどに戻りながら私をみているのがわかりました。私も、とてもとても驚きました。なぜなら、私に「忙しすぎる」なんて、脚の検診も半年ぶりなのに、もう外来もないし、もっともっと出会っていないドクターが、どうしてかな?と思いましたよ。普通、「どうですか」「おかげさまで」じゃないですか。
 
その後、予約の脚の検診がありました。腕をくんで、私の歩き方をみていた脚のドクターが「手術をしましょう」と言われました。その時にゴールデンスタンダードとはこのことだったのかと思いました。入院を決めると幾つか検査があって、脚のドクターに「ゴールデンスタンダード」と言われたことを話しました。不思議な不思議な会話をしていると思ったことを今も覚えています。
 
そうして、脚の手術を受けるわけですが、2年間延ばしている間に義父がアルツハイマーになっていたし、この時はまた、原因がわからなかったけど、「阪大始まって以来」と言われたくらいのリハビリの落ちこぼれでした。みんな、スタスタ杖もなしに歩いて帰るのに、両松葉づえで泣きべそで退院するという、あり得ない落ちこぼれだったのですよ。二度と歩けなかったらしどうしようと思いました。ドクターもみんなそう思ったと思います。
 
それがまた、劇的も劇的も、また歩けるようになって、それも何故かわからない。ただ、「ゴールデンスタンダード」が"エックス"だったのかも知れません。
 
腎臓の手術で入院の時に、ドクター三人のお名前の頭文字で「た(※)・ま・よ」というペンネームを作りました。その後「瑤世」という字が出来、"まな板の鯉(手術のこと)"をしたから"鯉"で、「鯉 瑤世(り たまよ)」になりました。そして今、「汲眞瑤世(きゅうしんようぜい)」という、私の法名になりました。
 
今回の怪我は、二回の手術の時と違って、もう、家のことも子どもたちのことも、何も心配することがありません。「ゴールデンスタンダード」が北極星のように輝いて、守ってくれています。
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